2011年3月6日日曜日

23年3月6日(日)蟇目矢(ひきめや)

・ 遂に武道館完成まで後1週間となった。来週の日曜日だ。極めて順調にここまで来た。何とか残り1週間頑張って素晴らしい竣工式としたい。毎日毎日お客さまが見えられて「お祝いのお品」を頂戴するのが心苦しい。決して望んではいないのだが、皆さん「是非に」と言ってくださる。有難い限りである。
・ 教職員も「親睦団体のよさみ会」から金一封を寄付してくれた。又管理職からも副校長と事務長、それに教頭先生で金額は違うが金一封が寄付されたのである。出入りの業者様からも多大な援助を賜り恐縮するばかりである。勿論領収書をお渡しし会計は明確にしている。

・ 一昨日は何と三井住友銀行の奥頭取から「御蟇目矢」(おんひきめや)と言う物を頂いた。あの財界でも有名な奥正之頭取である。持参された部長さんから受領したのだが恥ずかしながら私は「蟇目矢」(ひきめや)というものを全く知らなかった。
・ 桐箱入りで肥後五代目御弓師高橋蘇山氏製作とあり、見るからに由緒ありそうな立派なもので中には「短冊の一行もの」の書まで入っていたのである。高橋蘇山氏は文政2年と言うから1829年から旧肥後藩細川家お抱え弓師で現在で5代目となる名門中の名門の弓矢師のお家柄である。
・ ところがまず一行もの字が達筆過ぎて読めなかった。辞書を調べてようやく理解をした。「一箭有心」というものである。意味は矢は篠竹を加工して作るものだが矢作りの技術を以ってしても多少クセ(有心)は残る。一本一本の矢のクセを知り、使いこなすことで的に的中させることが出来るわけでこのことは組織における人材活用にも通じるとの意味である。
・ 全くその通りで私もクセある教職員のそれぞれのクセを掴みながら人材活用しているだけにこの「一箭有心」は心にぐっと来たのである。初めて知った教えの一行物の4文字の字句であった。恐らく弓師の先生の創作熟語ではないか。

・ 「箭」とは「せん」と読み、漢語辞典では竹の別称で茎が真っ直ぐで矢がらを作るのに適している篠竹、矢竹を言うことが分かった。箭は「進」の意味もあり確かに真っ直ぐというイメージである。勉強になった。
・ 「蟇目矢」とは引目、曳目、挽目とも書くが射放されて飛ぶ時の矢音が「蟇蛙」(ひきがえる)の泣き声に似ていると言う説や蟇目の形が蟇蛙の目に似ていると言う説などあるらしい。

・ 今昔物語二十五巻には源の頼光が蟇目矢で狐を退治したという話があるなど由緒は古いもので現在でも多くの「神事」に残されているとのことであった。「正月の破魔矢」、上棟式では屋根裏に「弓矢を飾る」こと、今八百長問題で大揺れに揺れている大相撲でも「弓取り式」がある。

・ 古来我国では確かに武道のことを「弓矢の道」と言い、武家を「弓矢の家」などと言い表してきた。弓取りとは「大将」のことであった。それから「弓矢の冥加」という言葉が出てきたと物の本にはある。

・ 神仏の加護を象徴するもので穏やかな形を持ちながらも弦を張った弓と瞬時に飛びぬく矢、その緊張感は「神聖視され邪気を払う」ものとして尊重されてきたとの事であった。そういう意味から弓矢と「破魔・開運・招運」の歴史は古く今日にその儀式が継承されてきている。

・ 三井住友銀行の奥頭取はこの辺のことをご存知で今回の武道館完成に合わせて贈ってくださったのだと思う。有難いことであった。そういえば東京オリンピックでは東京武道館開会式の最初に神事としてこの蟇目矢を引いたと本校弓道部の顧問は言っていた。

・ しかし人にプレゼントする時にはこのような物を贈れるような博識見識を持ちたいものだと私は反省するのである。今回のことは大いに勉強になった。目に見えるところにこの蟇目矢を飾りたいと思う。

・ このような立派なものを頂いて私は考えを改めたことがある。それは今まで現在、建設中の弓道場「玄武館」の余りにもその豪華さゆえ「まずかったかな。高校生には少しどころか、かなり贅沢な設え」と玄武館に幾分複雑な思いを有していたのであるが今回の蟇目矢で考えを改めたのである。「これで良し」と。「学校全体の破魔・開運の象徴としての玄武館」にする。

・ 後はこの立派過ぎるくらいの浪速武道館を使って本校生徒の為に先生方が良い教育を展開してくれたら理事長校長としては「本望である」と思ったのである。気分良くしていたら昨日の夕刊に又弓のことが記事になって出ていた。
 ・ 記事を木村流に言い約すれば「おごれるもの久しからず」と滅んでいった平家、実は那須の与一が扇を射落とした瞬間から、これを一期として一ヶ月後に壇ノ浦で終わった平家物語の一説を紹介した名文である。この時の矢は「鏑矢」(かぶらや)で先端に「蕪形の笛」が付いていて放てば高く鳴るのである。
・ 「蕪は浦響く長鳴りして誤たず扇の要際1寸ばかりを射て、ひゅふっとぞ射切ったる。・・・」という当に美酒に酔うごとき名文である。日本語は巣晴らしい。私は弓の持つ故事に感嘆せざるを得ないのである。

・ お茶室「洗心亭」の杉板戸に書いてもらう「大祓詞」の揮毫を頼んでいた先生の準備が出来たということで一昨日書いて頂いた。何と一日で完成である。プロの仕事である。素晴らしい字で100%満足である。私はとても嬉しくなった。徐々に気分が盛り上がってくる。


 ・ とにかく最後まで気を抜くことなく浪速武道館を世に送り出すため最後の力を振り絞って「浪速の弓とりとして頑張って参りたい」と改めて決意したのである。そして弓の先にはすでに武道館を通り過ぎて第5期工事であるカフェテラス、クラブハウスの工事が視野に大きくなっているのである。